ひとよ

ある家族の崩壊と再生。佐藤健主演映画「ひとよ」

最近、運が無いなと思うことが多く、かといって開運スポットなどに行く気もないものぐさな私は、「聞くだけで開運」などとうたっている音楽を流しながら寝ています。
YouTubeで検索するとたくさんあるんですよ。
「聞くだけですべてを浄化する」とか
「聞くだけで大金が手に入る」
とか…。
たくさんあるってことは私のような人もたくさんいるってことですよね…。

中でも今は「シンギングボウル」という金属の器の音色に魅了されて、ツキや運はもうどうでもよく、毎晩聞きながら眠りにつきます。

若い頃はお気に入りのミュージシャンの曲を聞きながら眠っていたのですが、年をとったのでしょうか。
夜に聞くのは歌詞がある曲ではなく、静かに響く音の方が癒されるの。

でも、妹には
「深夜、仏壇の鈴(りん)の音が聞こえてくるんだけど。不気味だからやめて」
と言われるんですけどね。

うん、確かに言われてみれば似ている…。

でもやめない。
毎晩「今日はどれを聞こうかな?」と選ぶことが夜寝る前のひそかな楽しみになっているので…。

さて、今回ご紹介する映画は「ひとよ」です。



では、あらすじを簡単に

「お母さんはお父さんを殺しました」
あるどしゃ降りの夜、タクシー会社を営む稲村家の母、こはるは子供たちにそう告げました。
酒を飲み三兄妹に暴力を振るう夫から彼らを守るためです。
それが最愛の子どもたちの幸せと信じて…。
母は15年後に戻ると約束し警察に出頭します。
たった1晩で稲村家の運命は大きく変わってしまいました。
長男の大樹、次男の雄二、長女の園子はあの夜の心の痛みを抱えたまま大人になります。
そして、15年たった夜、母、こはるが約束通り帰って来たのです。

作品情報

監督は白石和彌さんです。
2009年に『ロストパラダイス・イン・トーキョー』で長編映画デビュー。
代表作に『彼女がその名を知らない鳥たち』(2017年)『孤狼の血』『止められるか、俺たちを』(2018年)があります。
そして、映画『孤狼の血Ⅱ』(仮)が2021年に公開決定したようですよ。
前作が大好きな私は今からワクワクが止まらない!
「ひとよ」は劇作家である桑原裕子さんが手掛けた劇団KAKUTA上演の同名タイトルの舞台作品が原作となっています。

主演を務めたのは佐藤健さんです。
2007年に平成仮面ライダーシリーズ第8作『仮面ライダー電王』で連続テレビドラマ初主演。
仮面ライダー史上最もヘタレな主人公なんて言われていたっけ。
そして今年「恋はつづくよどこまでも」(2020年1月14日~3月17日TBS)のドSな天堂浬役にキュンキュンした方は多いのではないでしょうか?
ヘタレな青年からドSな医師まで幅広く演じることのできる実力派俳優です。
30代になって更に色気が倍増した気がします。

そして、鈴木亮平さん、松岡茉優さん、白石監督作常連の音尾琢真さん、佐々木蔵之介さん、田中裕子さんと各世代を代表する豪華名優陣が集結しています。

不器用な母の愛

酒を飲み子供たちに暴力を振るう夫をタクシーで轢き殺ろす、なんとも衝撃的なシーンからこの物語は幕を開けます。

主人公の雄二は稲村家の次男で今は実家を離れ、東京でうだつの上がらないフリーライターとして働いています。無精ひげを生やし、なんとも荒々しい。
やさぐれた佐藤健さんもよき。

そして、三兄妹の中で唯一結婚している兄の大樹は、夫婦関係に問題を抱えています。
妹の園子は美容師の夢を諦め、今はスナックに務めています。

母が望んだのは子供たちの幸せだけなのに、残された彼らの心に大きな傷を負わせてしまいます。
母が15年後に戻ってきても兄妹の気持ちは中々一つになりません。

しかし、中学生の時の雄二がエロ本を万引きしたエピソードは重苦しいストーリーの中でもクスリと笑え、しかも、不器用でまっすぐな母親の愛を感じ胸を打たれました。
“だれかにとっては特別な夜でも、他のだれかにはなんて事のないただの「一夜」”
果たして崩壊してしまった家族は再び“ただの一夜”を迎えることはできるのか?
家族の繋がりを切なく、温かく描いている作品です。

【ひとよ】
監督:白石和彌
原作:桑原裕子「ひとよ」
出演者:佐藤健
鈴木亮平
松岡茉優
音尾琢真
筒井真理子
MEGUMI
佐々木蔵之介
田中裕子
製作年:2019年
製作国:日本

※画像はAmazonより引用させていただきました

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