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粋で艶やか、オノナツメが描くフィルム・ノアール風時代劇漫画!「さらい屋五葉」オノナツメ著

私は、幼少時から父に時代劇ばかり見せられていたからか、20代前半までは時代劇に奇妙な嫌悪感を抱いていました。
25歳を過ぎた頃、父の本棚にあった時代小説を読んだことをきっかけに世界観に見事ハマってしまいました。
多分最初に読んだ本は吉川英治氏の「新・平家物語」だったかな?

当時、恋愛も仕事もうまくいかず、どちらからも逃げるように家に引きこもってた時期だったんですよ。
ですので、時間はたっぷりありました。
単なる暇つぶしのつもりだったのですが…。
はい、現実逃避とも言いますね。
でもいい現実逃避だったと思っています。

時代小説の魅力は時代背景にあると思います。
戦国時代や江戸時代などの時代を背景に物語が展開する時代小説には、私たちが学んだ歴史とは全く違うその時代の情緒や風情などが感じられます。
もちろんそれぞれの作家により浮かぶ情景なども違ってくるのですが、それもまた味わい深い魅力になっていると思います。

さて、今回ご紹介する書籍は「さらい屋五葉」です。時代物初心者さんにもお薦めですよ。
では、あらすじを簡単に。

~田舎から江戸に出てきた侍・秋津政之助は、気弱で恥ずかしがり屋な性格が災いして、藩から暇を出されてしまった貧乏浪人です。背も高く恵まれた体躯をもっているのに自信がないのでいつも猫背気味。武士であるというプライドを捨てられず、用心棒の職を転々とするものの、頼りなげな風貌から、すぐに断られるという日々を送っています。そんなある日、街で偶然出会った遊び人風の伊達男・弥一に用心棒を依頼された政之助は、これ幸いと請け負うのですが、実は弥一は拐かし(誘拐)を生業とする組織「五葉」の頭目だったのです。弥一に剣の腕を見込まれ、自らの意向とは逆に五葉の一味にされてしまう政之助ですが……。

作者のオノナツメさんは2003年に「LA QUINTA CAMERA(ラ・クインタ・カーメラ)」でデビュー。
2005年から『マンガ・エロティクス・エフ』(太田出版)で連載した「リストランテ・パラディーゾ」で注目を集めました。
時代劇、SF、男女バディものなど、作品によって絵柄も世界観も違った幅広いジャンルの作品を手掛けています。

大胆にデフォルメされたクセの強いキャラクターは時代劇には合わないのではないかと思いましたが、淡々と緩やかに展開するストーリーに意外とマッチしています。
画面の切り替え方やコマ割りが絶妙です。
そして、困った顔や焦った顔の微妙な表情の描写が見事です。

物語は気弱で恥ずかしがり屋な浪人の秋津政之助がひょんなことから弥一と出会い用心棒として雇われることから始まります。

お侍さんと言えば堂々として颯爽としたイメージなのですが、この政之助は気弱なうえに人に注目されるのが嫌だといういささか厄介な人物です。
人の良さからか何を言われても怒らないので、長屋のおかみさんたちに心配されたり、放っておけない可愛らしさがあります。
大きな背を丸めてしゅんとする政之助には私の母性本能が発動しました。

一方で、五葉の頭目の弥一は役者張りの色男で、楽天的に見せつつも世の中を達観しているような風情を漂わせています。
気怠い色気が溢れているのですが、どことなく品がある魅力的なキャラクターです。
五葉には他に居酒屋の主人梅造、女郎上がりで色っぽい美人のおたけ、腕のいい飾り職人で情報屋の松吉がいます。
一人一人キャラが立っていて味わいがあります。
そして、政之助が関わったことで、お金だけで繋がっていた五葉が徐々に信頼関係を結んでいきます。
しかし、弥一の過去を知る男の出現で、緩やかな日常は危うい空気を漂わせたものに変貌していきます。
果たして五葉はどうなるのか?

人間の持つ機敏を繊細に描いたスタイリッシュな時代劇です。
アニメ化もされていますので興味を持たれた方はぜひご覧になることをお勧めします。

さらい屋五葉
著者:オノナツメ
出版社:小学館
発行:2006年7月28日第1巻発売

※画像はAmazonより引用させていただきました

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