ミステリー小説は数あれど、読後は謎が解けて「スッキリ」ではなく、更なる謎が見えてきて追求したくなる不思議な小説「セカンド・ラブ」乾くるみ著
20代の頃、中学時代からの仲間と毎年スキーに出かけていました。
私は、スポーツ全般、いや、体を動かすことがあまり好きではないのですが、半ば強制的に連れて行かれていました。
「ビールおごってあげるから」
の一言で。
行ったら行ったで満喫するんですけどね。
準備が面倒だったのかもしれません。
当時は映画「私をスキーに連れてって」が流行っていたので、主人公のように白のスキーウェアを着たかったのですが、友人に
「あんたは遭難する危険性があるから派手なウェアにしなさい」
と言われ、赤を基調とした派手目なウェアを着ていました。
スキーは初心者並みに下手なんです。
そもそもビールに釣られて行くんだからいいんですよ。
下手でも。
家ではお酒は飲まないのですが、晴れた日にゲレンデを眺めながら飲むビールは格別でした。
白馬、苗場、蔵王にも行ったな。
懐かしい。
さて今回ご紹介する小説は乾くるみ著「セカンド・ラブ」です。
スキー場で出会った恋人同士のお話です。
(おかしいな、何度もスキーに行ったのに私に出会いはなかったよ)
ではあらすじを簡単に。
~里谷正明は会社の先輩から誘われたスキー旅行で、内田春香と知り合いました。交際を始めた2人は2月のある日、身形(みなり)のいい紳士に強引に呼び止められます。紳士は春香を新宿のパブで働く「美奈子」だと言うのです。後日、店を訪れた正明は、春香にそっくりな女、美奈子と出会い驚愕します。清楚な春香と大胆な美奈子。対照的な二人に揺れる正明。はたして、美奈子の正体は春香なのか?~
作者の乾くるみさんは1998年に「Jの神話」で第4回メフィスト賞を受賞し、34歳で作家デビューしています。
可愛らしい名前なので、「女性だ」と決めつけていたのですが、なんと男性でした。
ごめんなさい。
代表作は「イニシエーション・ラブ」です。
前田敦子さん、松田翔太さん主演で映画化もされています。
この作品も80年代後半を舞台としています。
「最後から二行目で全く違った物語に変貌する」と話題になった恋愛ミステリーです。
「セカンド・ラブ」もそのような系統の恋愛ミステリーといえばそうなのでしょう。
私はこの作品を妹に薦められて「“ラブ”ってことは恋愛小説だな」と思い込みながら読んだのですが、徐々に不穏な空気が漂い始め、先が気になりページをめくる手が止まりませんでした。
結末は何となくわかったような気はしていたのですが、頭の中は「?????」で埋め尽くされ、妹に「どういうこと?」と聞いてしまうという有様。
「わからなかった?」と言った時の妹のドヤ顔が、今思い返してもムカつきます。
「必ず2回読みたくなる」という「イニシエーション・ラブ」ですが「セカンド・ラブ」は3回、いえ、4回は読まないと混乱するかもしれません。
80年代後半は携帯などなかった時代です。
連絡の手段は固定電話、もしくは手紙でした。
時間など気にすることなく連絡が取れる現代とは違い、電話しても不在だったりするといらぬ心配をしてしまったり、行き違ったり。
今思えば不便だったんだなと思う数々が、この作品のミステリー要素をより深めているのだと思います。
一方で主人公の正明は女性経験がないとは言え、簡単に信じてしまう単純さにウチの息子を重ねてしまいちょっとイライラさせられました。
「おい、そこは疑え」と言ってやりたい。
春香も美奈子も美女だから仕方ないのかな?
ミステリー小説は数あれど、読後は謎が解けて「スッキリ」ではなく、更なる謎が見えてきて追求したくなるという面白い作品です。
セカンド・ラブ
著者:乾くるみ
出版社:文藝春秋
発行:2010年9月30日
※画像はAmazonより引用させていただきました